早期発見 人間ドックでわかる病気のまとめ
このコーナーでは、人間ドックでわかる病気にはどんなものがあるかを主に解説しています。病気の早期発見を目的とした検査の種類や、見つかる病気の特徴も踏まえて説明しています。
病気の早期発見のカギを握る人間ドック
人間ドックは保険が使えないため費用がかかる上に、時間もかかることから、なかなか足が向かない人も少なくありません。
しかし人間ドックにはとても大きな目的とメリットがあることを忘れてはいけません。
それは『人間ドックはさまざまな病気の早期発見のカギ』だということです。
病院を受診する人のほとんどはなんらかの症状や異常を感じて訪れています。実は症状や異常を感じるまでになっている状態は、ある程度病気が進行している可能性が高いのです。特に重篤な病気などは進行すると命に係わることもあります。
そのため健康で快適な生活をするために大切なことは、病気の早期発見だといわれています。早期発見すると治療は最小限で抑えられるだけでなく、治療後の経過も良好であることが多いのです。
そのために定期的に受診する人間ドックは、非常に有効な手段といえるのです。
人間ドックでわかる病気(一例)
人間ドックによる早期発見でメリットが期待できる病気にはどんなものがあるでしょう。
- がん(悪性新生物 )…1952年~2009年にかけて日本の死因順位ベスト3以内にランクインし続けている病気です(※)。
- 高脂血症…現代人が憂慮すべき病気のひとつです。
- 糖尿病…合併症が起こると非常に危険な病気です。
- 脳卒中…突然の発症やいったん罹ると生命に関わる危険な病気です。
- 心筋梗塞…日本の死亡原因でも高い割合を占めている病気のひとつ。発症の予測がカギとなります。
※参照元:厚生労働省/(死亡)第7表 死因順位(第5位まで)別にみた死亡数・死亡率(人口10万対)の年次推移
これらの病気は初期症状がわかりにくく、気づいた時には手遅れであったり、治療したとしても薬を飲み続けなければいけないという事態にもなりかねません。
人間ドックで早期に見つけることができれば、早期治療によって改善の見込みも高くなります。
このように人間ドックを活用することで、一生に関わる大きなメリットを得ることができるのです。
がん
人間ドックではさまざまな病気を発見することができますが、特に重要視されているのは「がん」ではないでしょうか。
人間ドックのオプションで、各部位のがん検査を行うことができるようになっています。
多くの人が、がん検診の一環として人間ドックを受けている傾向があります。
国立がん研究センターによる2019年度の資料によると、がん罹患数が高い部位として、胃、大腸、乳房、前立腺、肺、肝臓、子宮などが挙げられています。[注1]
れぞれのがんに特徴があり、検査方法も異なります。特に胃、肺、大腸は、2019年度のがん罹患数[注1]と2021年度のがん死亡数[注2]の順位において、いずれもベスト3にランクインしているため、人間ドックできちんと検査する必要があります。
[注1]参照元:国立がん研究センター がん情報サービス「がん罹患数の順位(2019年)」
[注2]参照元:国立がん研究センター がん情報サービス「がん死亡数の順位(2021年)」
健康診断で見つかりにくいがん
がんの検査は、健康診断と人間ドックの両方で行われますが、健康診断では見つけることのできなかったがんが、人間ドックでは見つかるというケースがあります。
この理由としては、人間ドックのほうが、がんの検査をより細かく行える項目が含まれているためです。
人間ドックは、健康診断よりも幅広い病気や異常の早期発見の目的としているため、一般的な健診と比較すると項目がたくさんあります。
そのため、時間と費用は健康診断よりかかります。
しかし、人間ドックでは健康診断で見つけることのできない病気が見つかる可能性が高いので、隠れたがんなどの異常がないかしっかり検査したいというときは、人間ドックを受けるほうが確実です。
どちらを選ぶかは受診者が選択することができますが、会社の保険制度などで健康診断を受ける場合、一定年齢以降は人間ドックを受けるシステムになっているところも多いようです。
高脂血症
ほとんどの人間ドックでは血液検査が行われ、肝機能や尿酸値を調べることができるほか、中性脂肪や総コレステロール値、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどの値を検査することができます。
中性脂肪やコレステロール値が高いと、高脂血症の有無を診断することが可能です。
高脂血症とは、血液中の脂質が高くなり、血管の壁に脂質がへばりついて、血管が細くなってしまう脂質異常症とも呼ばれる病気で、症状がひどくなければ自覚症状はほとんどありませんが、ひどくなると動脈硬化、血管や血液の病気を引き起こす可能性が高まるので注意が必要です。
このため、定期的に人間ドックで血液検査を行い、コレステロール値の異常を確認したら、生活習慣を見直すなどの対処をして、高脂血症を改善することが大切です。
糖尿病
糖尿病は、尿だけでなく、血液中の糖も異常に増えてしまう病気です。
糖尿病の合併症は、非常に恐ろしいもので、症状がひどくなると失明、腎機能の悪化や尿毒症が起こるほか、手足のしびれや壊死などが起こり、最悪の場合には、手足を切断しなければならないこともあるのです。
症状が軽い時期には、自覚症状がほとんどなく、自覚症状が表れたときには手遅れになっていることが多いため、糖尿病は、早期発見が非常に重要だといわれています。
そのため、定期的に人間ドックを受けて、糖尿病の早期発見に努める必要があります。
脳卒中
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり、破れたりしてしまうことで、脳に栄養が行き渡らず壊死などしてしまう病気です。
脳卒中は、「脳梗塞」と「脳出血」、「クモ膜下出血」の3つに分けられ、なかでも脳梗塞は、脳卒中の7割を占めるといわれています。[注3]
その大きな原因として動脈硬化が挙げられ、脳梗塞と動脈硬化は切っても切れない関係です。
人間ドックでは、動脈硬化が起こっているのか確認できるほか、肥満症や高血圧、高脂血症などを検査することで、脳梗塞の危険性を判断することができます。これらの指摘を受けた場合、将来的に脳梗塞を起こす可能性が高いといえるので、早めに対応する必要があります。
脳梗塞についてより細かく検査をしたい場合は、人間ドックのオプションで脳のMRIやMRA、頸動脈エコーなどで詳細な検査をすることも可能です。
心筋梗塞
人間ドックでは、心電図や心臓エコーなどの検査によって、心筋梗塞につながる虚血性新疾患の有無を調べることができます。
心筋梗塞とは、心臓の周りに通っている血管が、動脈硬化を含む何らかの原因によって詰まり、心臓を動かす心筋に血液が行かなくなってしまう状態をいいます。
狭心症という似た病気もあり、心筋梗塞は血管が完全に詰まった状態を指すのに対し、狭心症は血管が狭くなったり、細くなった状態を指します。
心筋梗塞や狭心症は、高血圧や動脈硬化、高脂血症などと密接な関係があるので、これらについて指摘を受けたら、やはり生活習慣を改善して血液の流れをスムーズ にすることが大切です。
乳がん
乳がんは、触診や問診だけでは発見することが難しいがんで、人間ドックではマンモグラフィ健診やエコーを用いて検査を行います。
マンモグラフィのメリットは、触診では確認できない小さなしこりも検査することが可能であり、レントゲン写真との比較がしやすいという点です。
デメリットは、妊娠中や授乳中の女性は受診できないこと、人によって検査に痛みを感じる場合があることなどが挙げられます。
痛みを感じる原因は、乳房を圧迫版で挟むことによるものなのですが、痛みには個人差があるので、さほど痛みを感じなかったという人も多いようです。
エコーは、乳房に超音波を当てて検査するもので、乳がん検査以外にもさまざまな診療に活用されています。
メリットは、X線を使わないため痛みを感じない、妊娠中や授乳中の人でも受けられるという点が挙げられます。
しかし、デメリットがあり、石灰化が判断しにくいという点、検査技師の技量によって乳がんの発見率に差がでてしまうという点 があります。
より細かく乳がんを検査したいという人は、マンモグラフィとエコーの療法で検査をすることで、より検査精度が高まります。
子宮がん
子宮がんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類があり、子宮頸がんは、妊娠経験のない女性に発症しやすいといわれています。
逆に子宮体がんは妊娠経験のある女性が発症しやすいがんです。
人間ドックでは、これらの検査を行うことができ、子宮頸がんの場合は子宮頚部を専用の綿棒などを使用して細胞を採取し、顕微鏡で異常がないかを調べます。
子宮体がんは、経膣超音波検査を使用して子宮内膜に異常がないかを調べる方法のほか、子宮頸がんと同じように専用の綿棒で細胞を採取して調べる方法もあります。
子宮がんは早期発見によって治療しやすい病気だといわれていますので、人間ドックで定期的に検査を受けることがとても重要です。
不整脈
脈が不規則であったり、脈が異常に速い・異常に遅いなどの症状がでる「不整脈」。不整脈は病気が原因のものもあればストレスなどで起こることもあり、治療が必要な場合と不要な場合があります。
不整脈には脈拍が1分間に50回以下の「徐脈」と1分間に100回以上の「頻脈」、不規則な「期外収縮」などの種類があり、心房細動を引き超すことも。心房細動では心臓から上手く血液が遅れず心房に血液が溜まり、いずれ血栓ができてしまいます。その血栓が脳に運ばれると脳梗塞を引き起こすため、とくに注意が必要です。
不整脈は心電図検査で見つけることができますが、1日のうち数分だけ不整脈の症状がでる場合は検査時に見つけられないこともあります。その場合は24時間記録できる心電計を装着して不整脈の異常波形を確認します。
狭心症
狭心症とは、心臓の表面を走る冠動脈がつまることで起こる病気です。冠動脈は太い血管ですが、動脈硬化を引き起こすと内側が狭くなってしまいます。その結果心臓の筋肉へ酸素や栄養を送れなくなってしまい、胸の痛みを感じるように。狭心症は階段を上る・運動するなど体を動かしたときに発作がでることが多く、それを「労作性狭心症」とよびます。しかし狭心発作の回数が増える、発作の持続時間が長くなるなどの場合は「不安定狭心症」とよばれ、突然「心筋梗塞」を引き起こすことも。
狭心症かどうかは心電図検査でわかりますが、発作がでていないと異常波形を記録できないこともあります。その場合はホルター心電計を用い、発作が出やすいタイミングの心電図を記録する方法で確認します。
肺炎・気管支炎
呼吸器疾患である肺炎や気管支炎。肺炎にかかると発熱や悪寒、息切れや胸痛の症状が現れ、空咳や膿性の痰がでることも。肺炎は65歳以上の高齢者や喫煙者、慢性呼吸器疾患などをもつ人が罹りやすいといわれており、死亡リスクの高い病気です。
気管支炎には急性気管支炎と慢性気管支炎があり、急性気管支炎はウイルス感染などで引き起こされます。一方慢性気管支炎は百日咳や喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが要因であり、長期にわたって症状が続きます。
なお、肺炎・気管支炎に罹っているかは胸部エックス線検査を受けることで確認できます。