消化器ドック
このページでは、消化器ドックを検討している人に向けて、消化器ドックで行われている検査項目の内容や費用相場を紹介。また、消化器ドックで見つけられる病気や受診するメリットなどもまとめています。
消化器ドックの検査項目と発見できる病名一覧
胃がん・大腸がんなどの消化器系のがんは、日本人の罹患数・死亡数の上位を占める病気です。消化器ドックは胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療を目的としており、検査で胃や腸の内部を観察することで小さな病変の発見も可能としています。
消化器ドックの検査項目(例)
※施設やコースによって、受診できる検査項目が異なります。詳しくは各施設にお問い合わせください。
検査名 | 消化器ドック 上部消化器コース |
消化器ドック 下部消化器コース |
|
---|---|---|---|
一般検査 | 問診・血圧・脈拍 | ◯ | 〇 |
血液検査 | 腫瘍マーカー | ◯ | ◯ |
腹腔内臓器系 | 腹部超音波 | ◯ | ◯ |
消化器系 | 上部内視鏡検査 | ◯ | - |
下部内視鏡検査 | - | 〇 | |
尿素呼気試験(ピロリ菌検査) | 〇 | - | |
ペプシノーゲン法(胃がん検査) | 〇 | - |
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
上部消化管内視鏡検査とは、口や鼻から内視鏡を挿入し、食道や胃、十二指腸といった上部消化管の観察を行う検査のことです。消化管内部の色調や凸凹、形状を詳細に観察し、潰瘍や炎症、腫瘍、ポリープなどかないかを診断。病変を認めた場合、組織検査のために病変の一部を採取・切除する場合もあります。
胃カメラというと内視鏡が喉を通るときの違和感や不快感から、苦しい・痛いと思われがちな検査です。ただ、技術の進歩によって内視鏡はコンパクトになっており、以前よりも負担が軽減されています。また、鼻から内視鏡を入れる検査なら経口の内視鏡に比べて負担が少ないため、施設に相談してみると良いでしょう。
下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡)
下部消化管内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入し、大腸および直腸内部を観察しながら、ポリープやがん、炎症などの病気の診断を行う検査です。腸管内を直接観察できるため、バリウムを使った注腸検査や大腸CT検査に比べて、微小な病変や色調の変化を捉えることが可能。
また、粘膜や糞便の一部を採取して病理検査や細菌培養検査を行ったり、見つかったポリープを切除したりすることもあります。
腹部超音波検査(腹部エコー検査)
超音波を使って、腹部の臓器(胆嚢・肝臓・膵臓・脾臓・腎臓)に異常や疾患がないかを調べる検査です。対象臓器のがんを発見するのが検査の一番の目的ですが、そのほかにも脂肪肝や胆石、胆のうポリープ、腎結石などの疾患の発見にも有効です。X線やCTなどと違って医療被ばくの心配がなく、妊娠中でも検査を受けられます。
10~15分程度で多くの情報を得られる診断能力の高い検査ですが、内部にガス(空気)を含む肺や胃、腸などは画像として捉えにくいことから、基本的に検査対象ではありません。
尿素呼気試験(ピロリ菌検査)
尿素呼気試験は、検査用の薬を使ってピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査です。ピロリ菌とは、胃炎や胃・十二指腸かいようなど、さまざまな消化器疾患のトラブルに大きく関わっているとされる小さな細菌のこと。そのほかに、胃がんとの関わりも指摘されています。
ピロリ菌に感染した人のほとんどが胃炎を発症し、除菌治療を行わない限り慢性的炎症が続きます。そうなると胃の粘膜を防御する力が弱くなり、ストレスや塩分の多い食事、発がん物質などの攻撃を受けやすい無防備な状態となってしまうのです。それにより、胃・十二指腸かいようや胃がんのリスクが高まるとされています。
尿素呼気試験は、ピロリ菌の検査のなかでも最も精度の高い検査です。検査自体も診断薬の服用前後の呼気を集めるという簡単な診断方法のため、内視鏡を使った検査よりも負担が少ないというメリットがあります。
ペプシノーゲン法(胃がん検査)
ペプシノーゲン法とは、血液中のペプシノーゲン値を測定して、胃粘膜の萎縮度を調べる血液検査です。ペプシノーゲンとは、胃で作られるたんぱく質分解酵素ペプシンのもとになる物質のこと。胃粘膜の老化現象となる萎縮性胃炎が進むと、ペプシノーゲンの産出量が減少します。
ペプシノーゲン法でペプシノーゲンの産出量を測定することにより、胃粘膜の萎縮に異常がないかを診断することが可能。胃粘膜の萎縮が強いほど胃がんになる確率が上がることが分かっているため、ペプシノーゲン法で陽性になった場合は、胃粘膜の萎縮が進んでいる状態=胃がんが発生しやすい状態と言えます。
血液検査のため、バリウムを飲んだり食事制限をしたりする必要はありません。また、医療被ばくの心配もないので、妊娠中の人でも検査を受けることができます。
見つけられる病気
- 胃がん
- 大腸がん
- 食道がん
- 胃ポリープ
- 胃潰瘍
- 慢性胃炎
- 十二指腸潰瘍
- 大腸ポリープ
- 潰瘍性大腸炎
消化器ドックの費用相場
消化器ドックの費用相場では、上部2~4万円、下部3~5万円と下部消化器検査の方が料金はやや高め。上部・下部をまとめておこなうコースでは5~7万円ほどが相場のようです。
たとえば胃腸の不調を感じていて、「胃の状態が気になるけれどお腹の調子も気になる…」という場合は、上部も下部も調べられるセットのコースがおすすめです。
- 【上部消化管内視鏡検査】2万~4万円(編集チーム調べ)
- 【下部消化管内視鏡検査】2万~5万円(編集チーム調べ)
- 【上部・下部消化管内視鏡検査】5万~7万円(編集チーム調べ)
消化器ドックに使用する検査機器(例)
内視鏡
内視鏡とは、細長い管の先端に小型カメラまたはレンズを内蔵した医療機器のことです。細長い管を口や肛門から挿入することにより、食道や胃、十二指腸、大腸の内部を観察することができます。
内視鏡は検査だけでなく治療・処置にも用いられており、体内の映像を早期のがんや腫瘍、ポリープなどを切除することが可能。体にメスを入れる通常の手術と違い、最小限の範囲に向けて直接治療を行うため、体への負担が少なく、治療後の回復も早いというメリットがあります。
消化器ドックでは、上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査で内視鏡が用いられています。口から内視鏡を挿入する胃カメラに対して不安や苦手意識がある場合は、鼻から内視鏡を挿入する経鼻内視鏡を導入している施設を選ぶと良いでしょう。ただし、鼻腔が狭かったり慢性副鼻腔炎などの耳鼻科疾患があったりする場合は、経口内視鏡を勧められることもあります。
施設によっては、鎮静剤を用いた検査を行っているところもあるため、少しでも負担を軽減したい場合は相談してみることをおすすめします。
X線
放射線の1つであるX線を使って、体内の状態を画像として映し出す装置です。レントゲン検査とも呼ばれ、健康診断などで検査を受けたことのある人も多いでしょう。胃や大腸などの消化管を調べる場合は、病変をより分かりやすくするためにバリウムなどの造影剤を用いることもあります。
経口内視鏡(胃カメラ)に比べて痛みが少なく、費用も安いといったメリットがある一方で、早期がんの発見を得意としていないデメリットも。その理由は、白黒の画像で描写するX線だと早期がんの特徴となる赤や白といった色の変化を捉えられないのと、小さな病変や平坦な病変だとバリウムでの認識が難しいためです。
胃がんの早期発見を目指すのであれば、内視鏡検査の受診をおすすめします。
超音波診断装置
超音波を使って、臓器の状態を観察する診断装置です。消化器ドックでは腹部超音波検査(腹部エコー検査)に用いられています。X線やCTなどと違って医療被ばくの心配がなく、検査もゼリーを塗った場所に検装置をあてるだけなので、負担が少ないのが特徴。消化器ドックのほかに、日常診療から精密検査、治療のガイド、治療後の経過観察まで幅広く使用されている装置です。
消化器ドックを受けたほうが良いケース
胃がん・大腸がんの発症リスクのある人の特徴として、以下のケースがあげられます。
胃がん
- ピロリ菌に感染している
- 食事の塩分量が多い
- 野菜や果物を普段あまり摂取しない
- 飲酒・喫煙習慣がある
- 食生活が不規則
- ストレスが多い、働きすぎなど
- 血縁者に胃がんになった人がいる
大腸がん
- 40代後半
- 飲酒・喫煙習慣がある
- 肥満
- 食生活に偏りがある(野菜よりも肉を摂取することが多い)
- 大腸にポリープがある
- 血縁者に大腸がんになった人や大腸ポリープの人がいる
- 潰瘍性大腸炎、クローン病、その他のがんの既往症がある
消化器ドックを受けるメリット
胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療につながる
胃がんや大腸がんは早期に発見できれば、手術によって治る確率の高いがんです。ただし、進行した状況で発見されると治療が難しくなってしまいます。胃がんや大腸がんは初期症状がほとんどなく、自覚症状が現れたときには、かなり進行している可能性があります。そのため、消化器ドックを定期的に受けて、早期発見・早期治療につなげることが大切なのです。
便潜血検査よりも精度が高い
便潜血検査における早期大腸がんの感度は53%~75%で、早期発見には限界があるとされています。消化器ドックで行われる大腸内視鏡検査や大腸CT検査は便潜血検査よりも精度が高いため、大腸がんの危険年齢とされる45歳以上の人は消化器ドックの受診がおすすめです。