脳ドック
このページでは脳ドックを検討している人に向けて、脳ドックで行われている検査項目の内容や費用相場を紹介。また、脳ドックで見つけられる病気や受診するメリットなどもまとめています。
脳ドックの検査項目と発見できる病名一覧
脳ドックは、頭部のMRI・MRIおよび頸部超音波検査などを行って、脳に関する疾患の早期発見を目的とした検診コースの総称です。
検査にはMRIやCT装置が必要になるため、全ての病院で脳ドックを実施しているわけではありません。ここでは脳ドックで実施される主な検査項目の内容や検査によって見つかる病気の種類を紹介しています。
脳ドックの検査内容(例)
※施設やコースによって、受診できる検査項目が異なります。詳しくは各施設にお問い合わせください。
- 脳疾患:頭部MRI 5種類、頭部MRA、頚部MR、頭部CT、頭部3DCT、頚部3DCT
- 一般検査:身長・体重・BMI・腹囲・血圧・視力・聴力・血圧脈波検査
- 血液検査:血液検査36項目、血液検査40項目
- 便検査:便潜血検査
- その他:画像CD、当日検査説明
頭部MRI検査
頭部MRI検査は、MRI装置を使用して頭部や頭蓋骨内の断層撮影を行う検査です。脳内組織の状態を調べることを目的としており、無症状を含む脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の診断・発見を得意としています。なかでも脳梗塞の検出力に優れているのが特徴です。
頭部MRA検査
頭部MRA検査は、脳の血管の状態を調べることを目的とした検査です。頭部MRI検査と同様にMRI装置を使用しますが、MRA検査は造影剤を使用せずに、脳血管を立体的に描出できるのが特徴。脳梗塞の原因となる動脈の狭窄やくも膜下出血の原因になる未破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形などのリスクを調べることができます。
頭部CT検査
頭部CT検査は、X線を用いて頭部の断層撮影を行う検査です。脳内を輪切りにした画像を撮影することにより、出血を伴う脳血管疾患(脳出血・くも膜下出血)や脳梗塞、腫瘍の有無を調べることができます。短時間の検査で急性期の脳出血を発見できることから、救急外来の検査でも使用されています。
頸動脈エコー検査
頸動脈エコー検査は、超音波を使って頸動脈の様子をリアルタイムで画像に映し出す検査です。頸動脈は首の左右にある血管で、脳に血液を送る重要な役割を担っています。全身の血管のなかでも動脈硬化のリスクが高いとされており、頸動脈エコー検査によって血管の詰まりや狭窄を調べることで、動脈硬化の進行度や脳卒中のリスクを調べられます。
検査方法は、ベッドにあお向けになった状態で首にゼリーを塗り、超音波を出す医療機器を当てながら動かすだけ。被ばくの心配や痛みがなく、体に負担をかけずに動脈硬化や脳卒中のリスクを調べることができます。
心電図検査
心電図検査は、心臓の電気的な活動を波形として記録し、心臓が正常に動いているかを把握するのが目的です。心臓の規則的な動きが乱れる不整脈の診断を最も得意としています。また、心筋梗塞や狭心症、心筋虚血も心臓の電気的活動に異常が生じるため、心電図検査はこれらの心疾患の発見に有用です。
また、不整脈や狭心症、心筋梗塞、心筋虚血は脳卒中のリスク要因でもあるため、脳ドックでも採用されています。
ABI(血圧脈波)検査
血圧脈波検査は、血管の硬さや詰まり具合を測定する血管機能検査です。いくつかある血管機能検査のうち、血圧脈波検査は体への負担が少なく、簡単に測定できる検査方法になります。血圧脈波検査にはABI、CAVI、PWVの3種類あり、ABIは両手と両足の血圧を同時に測定するのが特徴。手と足の血圧の比較や脈波の伝わり方を調べることにより、脳卒中の原因となる動脈硬化の程度を確認できます。
血液検査
採血により、肝機能や腎機能、脂質、糖代謝、貧血などを調べる検査です。脳卒中のリスク要因となる動脈硬化や高血圧、糖尿病などの症状や発症の有無を確認できます。
尿検査
採取した尿から、尿糖や尿タンパクの有無を調べる検査です。尿糖が陽性であれば糖尿病の可能性があり、尿タンパクが陽性なら腎機能が低下している可能性があります。腎機能の低下は動脈硬化や高血圧が原因で引き起こされている場合があるため、血管の状態を把握するのに役立ちます。
脳ドックで見つけられる病気の例(一部抜粋)
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳動脈瘤
- くも膜下出血
- 動脈硬化
- 脂質異常症腫瘍
- 変性疾患
- 脳血管障害(脳卒中)など
脳ドックの費用相場
脳ドックは検査項目と使用する機器、地域によって費用相場が異なります。NPO法人日本人間ドック健診協会が2013年に実施した人間ドックの価格調査(健保組合の補助や諸事情等は考慮しないもの)の資料によると、関東エリアにおける脳ドックの最低価格は30,000円、最高価格は73,500円です(※)。一般的にPET/CTを使用する検査では費用が高くなる傾向にあります。
- 30,000円~73,500円
参照元:[pdf]日本人間ドック健診協会 人間ドックの価格調査(2013年度・調査概要記載なし)
脳ドックに使用する検査機器(例)
MRI(磁気共鳴画像)
MRIとは、磁気の力を利用して体内の状態を詳細な断面画像で描写する装置です。脳ドックにおいては、頭部MRI検査や頭部MRA検査に用いられています。一般的なMRI装置はドーナツ型(トンネル型)をしており、閉塞感のある形状から閉所恐怖症の人は不安を覚えやすく、また撮影中に鳴り響く機械音が気になるという人もいます。
閉所が苦手な人でもMRI検査を受けやすいように、オープン型のMRI装置を導入している施設もあり。上下左右に空間があり、従来のMRI装置よりも開放的な設計になっています。また、特有の機械音も静かなため、MRI検査にあった苦痛や不安感が軽減されています。
閉所が苦手で脳ドックをためらっているという人は、オープン型のMRI装置を導入している施設を選ぶと良いでしょう。また、閉所恐怖症の人に配慮した検査を行なっている施設も多いため、閉所が不安という人は事前にその旨を伝えておくことをおすすめします。
CT(コンピューター断層撮影)
CTは、X線を利用して体の断面を画像化する装置です。X線を全方位から照射し、コンピューターが検出器に集められた情報を解析することで、体の断面画像を構成する仕組みになっています。コンピューターの解析技術が進んだことにより、断面画像を3D化することも可能です。
初期のCTは検出器が1列しかなく、撮影に時間がかかるのが欠点でした。そこからより高画質な撮影を目指したヘリカルCTが開発され、2000年頃には短時間で高精細な画像を得られるマルチスライスが登場。さらに、320列の検出器を備えたエリアディテクターCTも開発され、1回転で脳全体を撮影することが可能に。検査時間が大幅に短縮され、脳検査の負担軽減を実現しています。
脳ドックを受けたほうが良いケース
- 40歳以上で脳ドックを受診したことがない
- 高血圧・脂質異常(高脂血症)・動脈硬化などの診断を受けている
- 家族や血縁者に脳卒中になった人がいる
- 糖尿病、高血圧の傾向がある
- 飲酒、喫煙の習慣がある
脳ドックを受けるメリット
脳血管疾患の早期発見・早期治療につながる
脳血管疾患を代表する脳卒中は、かつて日本人の死因の大半を占めていた病気です。昔に比べると死亡率は減少傾向にありますが、これはあくまでも救急医療の充実や治療法の進歩によって、亡くなる患者さんが少なくなったため。脳卒中の患者数自体は今でも多いのが現状です。また、脳卒中を含む脳血管疾患が原因で寝たきりとなり、介護が必要となった人も増えています。
脳ドックの定期的な受診は脳血管疾患の早期発見や早期治療につながるほか、老後も自分らしく健康的に過ごすために重要です。
血管性認知症のリスクを把握できる
認知症のなかでも、血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害を原因とする症状です。脳ドックで脳血管疾患のリスクを調べることにより、血管性認知症のリスクの把握にもつながります。
また、脳ドックによっては簡易的な認知機能検査をはじめ、アルツハイマー型認知症において特徴的な脳の萎縮やリスク要因となる物質を調べる血液検査をオプションで追加できるものもあり。ただし、いずれも認知症のリスクを把握する補助的な検査のため、脳ドックで認知症かどうかを診断することはできません。